毛髪、頭皮のトラブルとは
皮膚科で扱う毛髪のトラブルは、脱毛症(円形脱毛症、男性型脱毛、など)、病的な枝毛・切れ毛、…など。
頭皮トラブルはフケ(脂漏性皮膚炎)、毛のう炎(ニキビ)などの湿疹、痒み、…などがあります。
詳しくは、各項目をご参照の上、気になる症状は、早めに皮膚科専門医へご相談下さい。
その他、紫外線や過剰な汗・皮脂、不規則な生活によっても、毛髪・頭皮はダメージを受けます。美髪のためには、紫外線・汗対策、栄養バランスに気を配り、髪・頭皮に負担をかけない洗髪とブラッシングを心がけましょう。
適宜ローション・オイルなどを使ったスカルプケア・ヘアケアも大切です。
毛髪の構造
毛髪は、皮膚から発達した器官で、ケラチンという線維性の硬たんぱく質です。十数種類のアミノ酸の結合により成り立っており、その強靱性や弾力性はシスチン(硫黄を含むアミノ酸)を豊富に含むことから来ています。
毛髪の3層構造 ~海苔巻きに例えると分かりやすい~
キューティクル(毛小皮)
海苔巻きの「海苔」の部分。厚さ約0.005mm。角化した扁平な細胞が毛先に向かってうろこ状に重なり合い、内側の毛皮質を保護。
コルテックス(毛皮質)
海苔巻きの「ご飯」の部分。ケラチンたんぱくが互いに線維状に捻じれ合っている。毛髪の色を決めるメラニン色素を含み、毛質を左右する部分。
メデュラ(毛髄質)
海苔巻きの「具」の部分。軟毛には無く、角化していない柔らかな細胞からなる。弾力性や保湿作用を担っているという説あり。
毛髪の成長メカニズム
毛髪は、皮膚表面に出ている「毛幹」と、皮膚内部の「毛根」からなります。
毛根の根元は球状に膨らみ「毛球」と呼ばれ、毛球の下のくぼんだ部分は「毛乳頭」と呼ばれ、毛細血管から栄養を取り込みます。その結果、毛球内部にある「毛母細胞」が分裂をくり返し、次々に細胞を押し上げて、毛髪は成長します。
へアサイクル(毛周期)
毛髪は、生えてから3~6年成長すると細胞分裂が止まり、やがて抜け落ちますが、また新たなうぶ毛(正しくは軟毛= 毳(ぜい)毛)が生え始めます。この一連の流れを「ヘアサイクル(毛周期)」と言い、毛髪1本ずつ異なっているので、その総数は一定しています。
人の毛髪の数は平均で約10~12万本といわれていますが、ヘアサイクルを平均4年とすると、10万本÷(365日×4年)という計算になり、毎日70本ほど抜けていることになります。年齢(*1)や個人差はありますが、1日に50~100本程度の抜け毛は普通のことで、特に心配する必要はありません。
また年間を通じ、最も抜け毛が多い時期は、9~10月です。
(*1:50~60歳では150本/日くらい抜けるとされています。)
主な毛髪トラブル ~脱毛症〜
円形脱毛症とは
円く毛髪が抜ける病気で、単発型を基本としますが、時に多発したり、頭全体(=全頭型)、あるいは全身(=汎発型)の毛髪が抜けるタイプもあります。
成長期の毛包が、自分自身のリンパ球から攻撃を受け破壊されてしまうことが原因です。ストレスとの直接の関係はありませんが、自己免疫に関わる病気と考えられており、なりやすい体質の遺伝はあるようです。
治療は、軽度であればステロイドなどの外用や内服薬で経過を見ます。中等症から重症では、局所免疫療法など専門的な治療を要します。
男性型脱毛症(AGA)とは
思春期以降の男性で、特に頭頂部~前頭部の毛髪が薄くなる(軟毛化)ものです。成長期が短縮するため、毛包は大きく成長せずに小さなまま退行期、休止期に至ります(=毛包のミニチュア化)。
男性ホルモン(アンドロゲン)のレセプターと、毛乳頭細胞のⅡ型5α-リダクターゼという酵素の作用が原因で、遺伝的要素が大きく関係しています。
毛髪に対しアンドロゲンは、頭部では薄く、ひげや胸毛など体毛では濃く(硬毛化)なるように、逆方向に働きます。
また、女性でも更年期以降を中心に、男性型脱毛のような症状になることがあります(女性型脱毛)。この場合、生え際の毛髪は保たれ、頭頂部中心に薄毛になります。
治療としては、男女共にミノキシジルの外用剤(毛乳頭細胞の増殖を促す)があり、更に男性では、フィナステリド(プロペシア®)またはデュタステリド(ザガーロ®)などの内服薬が効果的です。何れも保険適応ではありませんが、皮膚科専門医と相談の上、治療を開始するのが望ましいです。
主な頭皮トラブル ~フケ症(脂漏性皮膚炎)〜
フケとは
皮膚から生じる垢と同じで、剥がれ落ちた角質に皮脂や汗・ほこりが混じったものです。それ自体は新陳代謝による自然現象であり、脂性と乾燥性に分けられます。
頭皮の炎症を伴うフケは、脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬などの皮膚疾患による可能性があります。
脂漏性皮膚炎とは
皮膚では、毛穴の根元にある皮脂腺から皮脂が分泌され、皮膚表面に潤いなどをもたらす皮脂膜を形成していますが、何らかの原因でこの分泌が多くなった状態を脂漏と言います。その脂漏を基盤として、紫外線やカビ(真菌)などによって皮脂が遊離脂肪酸に分解され、その刺激で炎症を引き起こした状態が脂漏性皮膚炎です。
また癜風菌(でんぷうきん)という真菌が、脂漏性皮膚炎の発症や増悪に関与しているという報告があります。この菌は脂を好み、皮膚に常在しているものですが、脂漏性皮膚炎ではこの菌が異常に増えることもあります。
紫外線などが毛髪に及ぼすトラブル
紫外線は、髪の強度に関わる構造(シスチン結合)を切断してしまいます。その結果、髪の潤いを保つキューティクル(毛小皮)が剥がれやすくなり、髪のパサつき、切れ毛、枝毛を引き起こします。
因みに、他にキューティクルを傷める原因としては、ドライヤーの熱、プールの水、過度の洗髪やブラッシング、パーマ、ヘアカラーなどがあります。
ダメージヘアとは、髪の表面と内側それぞれに痛んでいる状態です。
傷んだ髪の表面
通常はきれいなうろこ状をしているキューティクルが一部で剥がれるなどして、デコボコ状態になっています。
傷んだ髪の内側
線維がもろく乱れてしまい、内部成分が流出してスカスカの状態になっています。
ダメージを受けて不均一になった毛髪の表面からは、過度に水分が蒸発してしまうので一層乾燥が進みます。
またシャンプーの際、互いに擦れることで更に傷つき、内部の成分が流出してしまう悪循環を生みます。
汗や皮脂が頭皮に及ぼすトラブル
過剰な皮脂や汗汚れは、毛穴を詰まらせて毛髪の成長を妨げたり、酸化して臭いの元となります。また過酸化脂質となり、頭皮を刺激し、乾燥性のフケの原因にもなりうるのです。
冷えや栄養不足が頭皮に及ぼすトラブル
冷房の効いた環境で長く過ごす人は、体の「冷え」にも気をつけたいもの。血行不良につながり、頭皮・毛髪への栄養が滞りやすくなります。
またダイエットや偏った食事などでは、毛髪の成分であるたんぱく質が不足しがちです。赤身の肉や魚、乳製品、大豆類、卵など積極的に摂るようにしたいものです。
毛髪によい食品とは
海藻類
豊富なヨードは、毛髪にツヤを与えます。
ビタミンA、B、D
Aは毛髪を丈夫にします。不足すると毛穴が硬くなり、毛髪の伸びが悪くなります。Bは発毛に関与し、Dは毛髪の発育を促進します。
ミネラル
亜鉛などは、毛髪の修復に役立ちます。
正しい洗髪方法
(1) 洗髪前
シャワーで髪を濡らす前に軽くブラッシングをします。先ずは毛先から優しく、毛髪のからまりをほぐすようにとかして、頭皮も優しくマッサージするようにします。
頭皮の血行が良くなり、ある程度ほこりなどを取っておくことで、シャンプーがしやすくなります。
(2) 素洗い(予備洗い)
シャンプーをつける前に、ぬるま湯で髪を軽く洗い流しましょう。実はこの段階でほとんどの毛髪汚れは落ち、その後のシャンプーの泡立ちも良くなります。
(3) 本洗い
シャンプーは直接頭皮につけるのではなく、手のひらで少し泡立ててから、髪の毛全体に馴染ませて洗います。大切なのは髪の毛を洗うのではなく、頭皮を洗うことです。爪を立てず、指の腹の部分でゆっくりマッサージするイメージで。
前頭部や頭頂部は特に皮脂が多いので丁寧に。
(4) すすぎ+リンス(トリートメント)
洗い残しがないよう、しっかりすすぎます。リンスやトリートメントは毛先につけてから髪全体に行き渡らせるようにします。
(5) ドライ(タオルドライ+ドライヤー)
タオルで頭皮と髪の毛の水分を優しく拭き取ります。タオルで髪の根元を抑えて、頭皮を軽く叩くようにすると水分を取ることができます。タオルドライである程度乾かすことができれば、ドライヤーの時間も短縮できます。ドライヤーは、10~15cm距離を取りながら、襟足に近い部分から乾かしていきます。
髪を濡れたままにしておくと、髪自体を痛め、頭皮に雑菌がつきやすくなります。夜は確実に乾かしてから寝るようにしましょう。
シャンプー剤は、フケ用や低刺激のものなど、お好みのもので構いません。また洗髪は基本的には1回/日で十分です。過度の洗髪は、逆に皮脂の分泌過剰を引き起こしかねません。
健やかな頭皮のためのセルフヘッドマッサージ
(1) ブラッシング
髪のからまりを取り除くために、事前に優しくブラッシングしておきます。
(2) ヘアローション
ヘアローション(またはオイルなど)を髪と頭皮全体に馴染ませます。
マッサージは、以下の流れを各3~5回ずつ、合計約3分程度で十分です。
(3) 頭皮をゆっくり動かす
5本の指の腹を耳の周りにあて、側頭部~頭頂部、うなじから頭頂部に向かって、部分に分けまんべんなくゆっくりと、頭皮がしっかり動いているのを感じながら、こわばりをほぐすよう指を滑らせます。
(4) 頭皮をもみほぐす
指の腹で頭皮をグッと掴み、爪を立てないよう気をつけながら、円を描くように揉みほぐします。側頭部から後頭部、頭頂部へと、少しずつ指をずらすように移動していきます。
(5) 頭皮のタッピング
頭皮を指の腹で掴んでは離す、という動きをリズミカルに頭皮全体に繰り返します。
(6) スペシャルケア – 薄毛・フケ・かゆみ対策
頭頂部の真ん中にあるツボ(百会(ひゃくえ))を中指と薬指でじんわりプッシュ。
(百会…頭皮の血行を促進するツボ。頭頂部、左右の耳の一番高い部分を結んだ線の真ん中です。)
当クリニックでは、症状に合わせて頭皮用美容液などをお勧めしております。